Switch2発売に寄せて:信頼の延長線上にある静かな革命
2025年6月5日。ついにSwitch2が発売された。
Switchの発売から8年と3ヶ月の月日が流れ、ようやく登場した任天堂の次世代ハードである。
Switch発売から月日が経ち、少しずつ新ハードの情報が漏れ出てきて、年明けの動画による発表でようやく正式名称と外観、大まかな機能が明らかにされた。そして、4月のSwitch2ダイレクトで詳細が明らかになり、それから2ヶ月は抽選販売に翻弄される日々が続いた。
2023年と2024年の株主総会では「お客様の需要を満たせる数をしっかりと生産する」と2年連続で回答しており、通常のゲーム機発売日に準備する数量を大幅に超える作り置きをしていたことは間違いない。
しかし、有料サービス加入1年以上、プレイ時間50時間以上という高い条件を設定した公式通販の抽選に対する220万件という膨大な申し込み数は、任天堂にとっても予想を大きく超える誤算だっただろう。
これまで日本国内で新しいゲーム機がリリースされたときに発売日当日に手に入れる人たちはせいぜい30−40万人ぐらいで、その何倍もの人数が抽選に殺到したのはかなり想定外の事態だったのではないだろうか。当選倍率の低さが話題を生み、話題になれば注目する人が増え、ますます手に入りづらくなっているように思える。
おかげで、私の周囲のヘビーゲーマーたちの中にも発売日の入手を断念した人たちが多数いる。きっと、この記事も複雑な感情で読んでいることだろう。早く、抽選に申し込まなくとも手に入れられる状況になってほしいのだが、いつになることだろうか。
革命のないハード
Switch2はなぜ、これほどまでに注目を集めてしまったのか。
任天堂ハードの革新性、意外性を魅力と感じ、3DスティックやWiiリモコン、2画面の液晶など突飛な新機能に魅了されてきた任天堂ファンとしてはSwitch2は驚くほど保守的に感じた。
Switchからの進化は順当な性能アップとゲームチャット、マウス機能ぐらいしかない。Revolution(革命)のコードネームが付けられたWiiなどと比べると超保守的だ。それが多くの人達の目には「安心してSwitchから買い替えられる」と映ったようだ。
将来がどうなるのか不明な機能がもたらす意外性よりも、今まで遊んでいたゲームがより快適に遊べる安心感のほうが財布の紐を緩ませやすいのだろう。任天堂はSwitchとSwitch2の違いをあえて少なくすることで、Switchからの買い替え先はSwitch2しか存在しないと思わせた。これはiPhoneの買い替えに近い感覚だと思った。
Switch2発売日から何年待ってもSwitchの更新先としてSwitch2を超える選択肢は出てこないのだから、どうせそのうち買うことになる。だったら、早く買ったほうが長く使えてお得だとみんな考えたのだろう。そりゃ1年以上有料サービスに加入してSwitchを愛用している人たちは発売日の抽選に殺到するよ。
それでも、6月のボーナスが出るまでは…、年末商戦までは…、欲しいソフトが発表・発売されるまでは…と様子見の人たちが発売日組よりも多く存在するだろう。任天堂は発売日の混乱を見るより前に増産に取り組んでいるだろうが年末商戦は発売日以上に地獄になるかもしれない。
そういった混乱の中で発売されたSwitch2だが、私は無事入手することができた。
こんにちは、Switch2
第1回の抽選でマリオカートセットを申し込んで落選したものの「2万円高いが多言語対応版なら当選率が高い」という情報を得て、2回目は多言語対応版に切り替えることで当選したのである。
当選が嬉しすぎてメールを印刷して飾ってしまった
当選したことに浮かれてPROコントローラー、カメラ、microSD Express、キャリングケース、ハンドル、充電グリップ、ゲームキューブコントローラー、Joy-Con2セットを購入し、まあまあえげつない金額になったが、落選した人たちの分も楽しむぞ!の気持ちの現れだ。
発売日にSwitch2と付属品が届き、開封とセットアップを行った。Switchからのデータ引っ越しは容易で、画面の指示に従い、2台の本体を近づけた状態でデータを転送する。インストール済みのゲームソフトはSwitch2側で再ダウンロードだが、ゲームで遊んでいる間に裏でやってくれる。マリオカートワールドのダウンロード容量が大きかったので先に「NINTENDO Switch2のひみつ展」のダウンロードを済ませて遊びながらマリオカートをダウンロードした。
Switch2はSwitchと変わり映えしないように作られており、画面サイズや触り心地など差異は感じるものの、遊んでいるうちに違和感が消えてくる。今まで使っていたSwitchそのものが更新された感覚に近い。やはりiPhoneの機種変更と似た雰囲気だ。安心感がすごい。
ひみつ展で知る革命
「ひみつ展」は発表された当時から、自分が好きそうなゲームだなと思っていたが、予想通り任天堂マニアには最適なゲームだった。本体や周辺機器を部品単位で解説し、それぞれの機能をミニゲームやデモで体験できる。
情報量がものすごく、例えばJoy-Con2のマウス機能解説ではNINTENDO64マウスのようなレアな過去機種の紹介まで出てくる。HDRや4K、VRR、スーパーレゾリューションなど、言葉で説明されても分かりづらい概念も実物を見せてくれるミニゲームやデモで体験できる。
先程からSwitchとSwitch2の差が小さいと書いていたが、その小さな差の中に最新技術や膨大なアイデア、試行錯誤が詰め込まれていることを「ひみつ展」を通じて実感できる。
また、収録されたミニゲームの中には「機能解説ソフトの中に入れていいレベルじゃないだろ」と思えるような超絶難易度の劇ヤバゲームがいくつかあるので腕に自信がある人も買うといいだろう。
これは「トゲトゲよけ」というミニゲームの最高難易度。
Joy-Con2のマウス操作でトゲトゲを避けながら星を集めるルールだが、両手にJoy-Con2を持って2つのUFOを同時に操らないといけない。だいぶしんどい。
ちなみに、ダウンロードソフトはマイニンテンドーストアで買うよりアマゾンで買うほうが1割ほど安く買える。
Nintendo Switch 2 のひみつ展|オンラインコード版
マリオカートの革命
続いて、マリオカートワールドもプレイした。
マリオカートシリーズは、集大成と言えるマリオカート8DXで「やれることぜんぶやっちゃったな」感が出ていた。私は、続編が出るならオープンワールド要素を入れるような改革が必要だろうなとぼんやり考えていて、その通りのものが出てきた。
今のところ、8DXとワールドのどっちが上なのかはわからない。マリオカートワールドはとても楽しくて新しいが、戸惑いもある。このソフトをちゃんと評価するためにはもう少し時間が必要そうだ。Switch本体→Switch2本体のような順当進化ではなく、ゲームキューブ→Wiiのときのような感触がある。ハードでは保守的に、ソフトでは革新的にしているのかもしれない。
オンライン対戦ではチェックポイントごとに4人ずつ脱落するサバイバルが楽しい。最初は24人でしっちゃかめっちゃかしていて、アイテムがそこらじゅうから飛んでくる。後半はガチのスピードレースになり、前半と後半でじわじわとゲーム性が変わっていく感覚が面白い。脱落したらすぐに次のゲームに移れるのもいい。バトルロワイヤル系ゲームとマリオカートのきれいな融合だと感じた。
拍子抜けするほど簡単なゲームチャット
発売の翌日にマリオカートをプレイしていたら、友人からゲームチャットのお誘いの通知が来た。
せっかくなので誘いに応じて入ってみたが、これが予想の数倍面白かった。
発売2ヶ月前のSwitch2ダイレクトで大々的に発表されたCボタンで起動するゲームチャットだが、プロモーションビデオを見てもいまいちピンと来ていなかった。体験して初めて、Switchからの最大の進化ポイントだと感じた。
まず、設定が容易だという点。
手順1:フレンドになる
手順2:Cボタンでチャットに誘う
これだけだ。
誘われる側の手順はこうだ。
手順1:フレンドになる
手順2:チャットに誘われたらCボタンで入る
カメラを接続する場合は、「Cボタンを押してカメラをONにする」の手順が追加されるだけ。
チャットに関する機能はすべてCボタンに集約されるので「ゲームチャット固有の操作が必要な場合はCボタンを押す」とだけ覚えておけばいい。
Switch2の革命を知りたければCボタンを押そう
ゲームチャットを起動して、最初に本体のマイクの性能(正確に言うとマイクが拾った音の処理)に驚かされた。
テレビ近くに置かれたドックから離れていても雑音をカットして聞き取りやすい音量で声だけを届けてくれる。ハウリングを起こしたり、ボタン操作音が入り込むこともない。かなり感動したのだが、これは実際に体験しないと伝わりづらい要素だろう。
会話しながら同じゲームで対戦するだけではなく、互いの画面を共有してそれぞれ別のゲームで遊ぶこともできる。ゲームの切り替えは普段通りHOMEボタンを押して別のソフトを起動するだけでいい。ゲームチャットに入っていてもいなくても操作方法はほぼ変わらない。
最初は一緒にマリオカートで対戦していたが、一通り遊んだあと各々好きなゲームを起動しつつ、雑談していた。これが、同じゲームで遊んでいるときよりも自由で楽しかった。
オンラインゲームは以前から色々と遊んでいるが基本的に野良プレイ(固定の仲間と一緒に遊ばずランダムの相手と対戦)ばかりしている。それは「途中で抜けると迷惑かも」と考えたり「決まった時間にログインしないといけない」という制約が煩わしく感じたためだ。
互いに別々のゲームで遊んでいればその煩わしさが緩和されて、ハードルが格段に下がったように感じた。
相手の画面を拡大表示することもできるので、新しいソフトを買ったときに紹介したり、難しいステージで困っているときにレクチャーしてもらったりもできるだろう。活用方法はいくらでも考えられるので、ゲームチャット前提で開発されたソフトが出てきたときに、予想外のすごい体験ができるかもしれない。楽しみだ。
アクセシビリティ機能はみんなのために
ゲームチャットを体験する際に是非試してほしいことがある。
Cボタンを押して設定画面を開き、アクセシビリティで「音声を文字で表示」をON。
ゲームチャットを起動していない状態の場合は本体のオプション内のアクセシビリティのところで設定できる。
これで、自分や相手が喋った言葉がリアルタイムで文字起こしされて、Youtubeのチャット欄のような表示でメイン画面の右側に表示される。
この文字起こしの精度がかなり高く、かな漢字変換もしっかりやってくれる。
複数人が同時に喋って聞き取りづらいときも、話者のアイコンとニックネーム付きで分かれて文字起こしされるから目で確認ができる。
ゲームに夢中で聞き逃したときも十数行程度のログは表示されているので見返すことができる。
声が似ている人が複数いてどっちが喋ったかわからないときも、話者ごとに表示されるからすぐに分かる。
文章で説明してもすごさが伝わりづらいと思うが、一度この機能を使うと、OFFに戻したくなくなるぐらい便利なレベルなので一度体験してほしい。
以前、任天堂とアクセシビリティについて記事を書いた。
任天堂とアクセシビリティ | N-Styles
基本的には体に不自由を持っている方々をサポートするためにアクセシビリティ機能が用意される。一部の人のための機能ならどうしても対応するコストの問題が出てくる。しかし、実装の仕方によっては誰にとっても便利な機能になりうるし、みんなにとってメリットがあれば実装のハードルが下がってくるものだ。これは本当に素晴らしいと感じた。
笑顔を取り戻せるか
Switch2は奇抜さを全面に押し出さず、Switchの延長線上にある存在であることをアピールし、信頼で選ばれるハードを目指した。
しかし、任天堂が持つチャレンジ精神はSwitch2に追加されたCボタンにひっそりと宿っていた。
「娯楽を通じて人々を笑顔にする」という任天堂の理念を最も体現したハードと言えるだろう。
一方で、抽選販売の混乱はせっかくの笑顔を曇らせてしまった。
今年の株主総会で、その曇りが晴れるような情報が出てくることに期待したい。
予想の答え合わせ
さて、1年ほど前にSwitchの次世代機について予想記事を書いた。
次世代Switchの現実味のある予測(2024年5月現在) | N-Styles
答え合わせの時間だ。
発売時期:2024年11月〜2025年3月
はずれ。
6月になってしまった。
価格:299.99ドル〜399.99ドル(ただし、日本は39,980円〜49,980円)
当たり。
北米449.99ドル、日本限定版は4万9980円
北米価格が予想より若干高くなってしまったが、国内外で価格差を設定すること、その理由付けとして何からの差をつけてくること、国内価格が5万円以下であることは正解したので、ほぼ当たりと言っていいだろう。
ソフト価格:日本におけるSwitchソフト+1,000円程度
当たり。
まあ、高くなるのはしょうがない。
海外でも値上がりしたのは想定外。
互換性:Switchと互換性あり
当たり。
それはそう。
ただ、革新性よりも互換性を重視したコンセプトを予想できたのはいい感じだと思う。
グラフィック性能:PS4Proと同等
当たり。
チップ性能を見れば、PS4Pro以下と言えるし、技術的なカバーでPS4Pro以上の映像を出せるとも言える微妙なところだが、想定性能ラインとしてPS4Proを提示したのは妥当と言えるだろう。
本体ディスプレイ:液晶(Switchより大型・高精細化)
当たり。
有機EL版はそのうち出るだろうか。
内蔵ストレージ:256GB〜512GB(NVMe)
当たり
容量は256GBだった。
拡張ストレージ:microSDカード
ハズレ
記事を書いた時点でmicroSD Expressの存在を知らなかったのでしょうがない。
ネットワーク:Wi-Fi6対応
当たり
まあ、順当。
カメラ:搭載なし
当たり…かなあ。
搭載はしなかったけど、純正周辺機器としてカメラを全面に押し出してくるのは予想外。
コントローラ:機能面はSwitchとほぼ同等で使い勝手向上
はずれ。
Cボタン搭載までなら当たりとしていたが、マウス機能搭載は流石に予想外なのでハズレ判定とした。
ローンチタイトル:マリオ3D新作、ドンキーコング新作、ゼルダの伝説ブレス オブ ザ ワイルド
はずれ
ローンチでマリオカート。言われてみれば、それが正解としか思えない。なんで思いつかなかったのだろう。流石にマリオカートを当てずに、マリオ3Dを入れたのはハズレ扱いとしたい。
ドンキー新作は準ローンチタイトルとして出てきたので、まあ当たりと言える。
ブレスオブザワイルドのリメイクは完全新規タイトルではなく、1000円のアドオン扱いだがまあ当たりかな。
当たって当然のものも含まれるが、内外価格差も含めた価格部分をいい感じに予想できていたし、半分以上は当たっていたので合格としてほしい。
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